社内教育に必要なのは動機付けの努力

米国時間7月11日、Amazonは7億ドル(約800億円)を投じて米国の労働者を再教育し、
彼らをスキルのある技術職や非技術職に移動していくと発表した。

会社は、職種や分野、役職によってさまざまな教育を行う必要がある。
株式会社セキュアスカイ・テクノロジー(以下SST)では、そのごく一部であるWebサイトセキュリティの管理者や開発者にセキュアプログラミング教育を2009年から関わって実施してきたが、ユーザーの変化に合わせて今後どのようにすべきかの悩み・課題は続いている。

Amazonの発表に関する記事を読みながら、今後の社内教育の重要性を再考してみた。そこで、うっすら見えてきた社内教育のやり方について語ります。

教育のあり方の変化

もともと社内教育における重要な事は下記の2つだと考えていた。

  • 品質の高い教育コンテンツ
  • 教育手法(オンサイトセミナーやeラーニングなど)

以前にJMOOCの勉強会に初めて参加した際に、大学の教授が今後の高等教育をどのようにしていくかを話していた。

それは、監督官庁との合意は簡単ではないが、大学が今後、何をしなければいけないのかは
はっきりしているという話だった。

  • 従来の時間(授業出席)を基本とした単位という概念からの脱却
  • 従来の分野、学部、学科といった縛りからの脱却
  • 従来の公式学習、非公式学習といった区別からの脱却
  • 従来の4年生といった縛りからの脱却、つまり短くても長くても良いという事
  • 教育機関からの押し付け教育ではなく学習者が自ら選択できる

上記で期待できる変化は以下。

  • 成績判定のABC評価などが不必要になり修了したかどうかだけになる
  • かかる時間は人によってまちまちで良くなる、例えば2年学部を卒業なんて人も出てくる
  • 学習者のスタイルやニーズに応じて教材を選択可能

ここで、教授の話で気づいたことがある。

時間をかけるかどうか、どれだけのスピードで学習するかは、個人のリスクであるが受講者自身が決められるという事。

自ら学習したくなる動機付けの重要さ

社内教育というのは、昔からの慣習で義務であることが多い。私が教育現場で感じた一番の疑問は、「やる気がない人に対して、勉強させること・必要な知識をもたす事が可能かどうか?」である。参加者から寄せられるよくある意見には、「業務で忙しいから難しい」「休日に勉強する場合は休日手当が適用されるのか?」というものだった。

しかし、人は自分で覚えたい!勉強したい!仕事の役に立てたい!と自分自身が決めた場合は、とても積極的に自ら学習するものだ。

大事なのは、会社は学習の動機づけになるような事をさまざまな手段で行うということだ。

義務ではなく、自由参加で興味を持つかもしれない動機づけの機会を多方面からつくること

興味・関心を持った意欲のあるメンバー向けに、一定基準をクリアしたコンテンツなど教育環境を用意すること

これと関連する試みがある。
SSTのセキュアプログラミング教育では、オンサイトで動機付けセミナー(3時間程度)を開催している。実際にデモなども交えて講師が説明するので興味・関心を引くことができる。ただし、これだけでは不十分だと考える。

そもそもセキュリティが必要となる根本を理解するための動機付けも必要だと思う。そこで、セキュリティインシデントをテーマにするのはよいだろう。

例えば、成功事例だけではなく、失敗してしまったこと、危険であったことなどを積極的に社内で共有する勉強会、外部講師や専門家を招いた勉強会、さらにはCTFの社内開催などは効果的だと思う。

このような文化や教育の基盤をもつことは、結果的に会社を強くすると思う。
会社が必要と考える学習を個人に押し付けるのではなく、必要と感じさせる機会とコンテンツと環境づくりが大事だと考える。
会社は、社内教育の本質を追求しつづける努力が必要である。